NEW! カーボンニュートラルにむけた中小モータ・メーカーの取組み
Joeです。
糸島が舞台の朝ドラ「おむすび」も終了し、あっという間に4月新年度ですね。
福岡では先週桜の満開を迎え、弊社でも敷地内のグランドでプチお花見を行いました。
今週はつつじのつぼみが膨らみ開花しそうな気配です。この心地よい春の気候がしばらく続いてくれることを望みます。
各種予測によると、観測史上1位の高温になった過去2年の夏と比較するとやや落ち着くものの、2025年も猛暑となる見込みです。実際ここ数年は一気に気温が上がって桜とツツジ・サツキがほぼ同時に咲き、冬から春を通り越してすぐに夏が来る感じでした。
下記は弊社の工場屋根上の気温測定グラフです。6-9月各月平均気温の推移を10年間比較しています。

明和製作所は工場の屋根に太陽光パネルを設置した2013年11月からずっと、発電量だけでなく照度や温度の1H毎平均値データを記録しています。それを見ても2024年7~9月の温度は異常でした。今年はどうなるか??
太陽光パネルには遮熱効果もあるのですが、昨年は工場2F天井下にも遮熱シートを全面設置しました。
作業環境で10%程度の冷却効果がありそうです。

地球温暖化の影響は夏の暑さや豪雨災害だけでなく、豪雪や山火事、米や野菜果物などの農作物、のりや魚類などの海産物の不作など様々なところに表れ、福岡近海の玄界灘でも海水温の上昇によりサンゴや熱帯魚が観測されています。
地球温暖化の影響が年々増していく中、社会のあらゆる階層で温室効果ガスの排出を減らして行く事が必須となり、企業運営においても環境ISOだけではなく、ISO9001でも2024年2月の改定で気候変動への対応を明記する事が義務付けられました。弊社のような中小企業ができることの影響は小さいですが、今回は明和製作所におけるカーボンニュートラルへの取り組みについて書いてみます。
カーボンニュートラルとは
既にご承知のことと思いますが、カーボンニュートラルとは温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる事で、地球温暖化の防止や、持続可能な経済社会の構築に不可欠な課題としてCOPなどを開催して国際社会で解決に取り組んでいます。
2015年に採択されたパリ協定では、「世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2度より十分低く保ち、1.5度以内に抑える努力をする」という目標が掲げられ、日本を含む120以上の国・地域が、2050年までのカーボンニュートラル実現を目標として掲げています。しかし2024年度の世界の平均気温は史上初めて1.6度を超えてしまいました。
日本では当面の目標として、2030年度において、温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指すこと、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けることを表明しました。
トランプ政策によるアメリカのパリ協定離脱や石油依存の復活、欧米でのEV販売の減速など、一時的な揺り戻しや停滞はありますが、科学的な見地や世界的な潮流を覆す事は出来ません。
■各分野での取り組み
・電力関係では、太陽光・風力・地熱・バイオマス燃料等の再生可能エネルギー発電の普及によるCO2 削減(火力発電から再生可能エネルギーへ)
・自動車関係では、電気自動車・ハイブリッド自動車・プラグイン・ハイブリッド自動車・水素燃料電池自動車等の電動車の普及によるCO2削減(ガソリン車から電動車へ)
・建機及び農機関係では、内燃機関から電気モータ化によるCO2削減
・家電関係では、消費電力が少ない省エネ家電及びリサイクル家電利用によるCO2削減
・工場では、常時運転しているコンプレッサーによるエアー工具から電動工具化によるCO2削減
などがあります。
■電気モータ分野での取り組み
モータは現代文明社会のあらゆる場面で使われ、国際エネルギー機関(IEA)によると、世界の消費電力量は24兆700億キロワット時(2021年)。このうち約半分はモータが消費する電力で、世界中のモータの消費電力を1%削減すれば、1200億キロワット時の省エネ、原発13.5基分に匹敵する規模になるとの事。
日本では1997年の気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)における京都議定書の締結を受けて、省エネ法が1998年6月に改正されました。その対策の1つとして2015年に「トップランナー制度」が導入され、産業モータ(三相誘導電動機)の高効率化の取組みが進みCO2排出量削減を推進しています。
■弊社製品分野でのCO2削減の取り組み
明和製作所では「誠実・創造・明和」の経営理念に加えて、「私たちの子孫へと地球環境を守り残すべく、CO2削減による地球温暖化防止と内燃機関から電気モータへの動力変換による低環境負荷社会の実現に向けて高効率・省エネ、リサイクル性を高めた製品開発と素形材生産技術で貢献する。」というビジョンを2009年に定めて事業を推進してきています。
弊社では三相誘導電動機を製造していませんのでトップランナー制度は対象外ですが、2019年からそれを上回る高効率のIPMモータの製造を開始し、小型化及び高効率化を目的とした誘導電動機等からマグネットモータへの置き替えや、特殊車両のエンジン駆動からモータ駆動への置き替え等の案件引き合いを頂いて量産化が実現し、少しずつですがCO2排出量削減に貢献しています。
特殊車両と言ってもトラクターのような大型ではなく、電動草刈機・小型高所作業車・農事用台車等の2馬力(1.5kW)程度の用途を中心に対応しています。特に農業機械の電動化は農業従事者の減少・高齢化を背景に今後拡大していくことが期待できる分野と考えています。
(下記はイメージ画像です)

またモータの更なる小型化高効率化のために、ネクストコアテクノロジーズ社との連携でアモルファスコアを使ったモータの開発を推進しています。下記関連ブログもご参照して頂けると幸いです。
「アモルファスコアを用いたモータの開発・実用化」https://www.meiwa-ss.co.jp/blog/20230117_8370/
「アモルファスモータについて(前編)」https://www.meiwa-ss.co.jp/blog/20230510_8908/
「アモルファスモータについて(後編)」https://www.meiwa-ss.co.jp/blog/20230707_9117/
「テクノフロンティア’24(アモルファスとは?)」https://www.meiwa-ss.co.jp/blog/20240820_10445/
■弊社工場での製造段階におけるCO2削減
明和製作所の工場での2024年度のCO2排出量は258tで、2013年比では△27%となっています。
弊社はカスタム設計小ロット一貫生産を特徴としており、モータの組立、モータ巻線だけではなく、機械加工、焼入れ、アルミダイカスト鋳造を行っていますので、LPガスと電気が最大のCO2排出源です。弊社工場内からのC02排出を単純に削減するのであれば、生産量を減らしたり、大きなエネルギーを消費する熱処理や鋳造を外注してしまえば良いわけですが、それでは本質的な解決にはなりません。
弊社ではLPガスに関してはアルミダイカスト工程での生産標準時間とガス消費量との指標管理、電力に関しては、全体のデマンドピーク管理はもちろんですが、社内78カ所の配電盤や主要機械に付けた電力監視モニターで1H毎の使用量を記録して、毎月の生産会議で異常値や改善点を確認しています。
生産高との対比による指標管理を行い、過去15年以上にわたって徐々にエネルギー効率の良い省エネ設備に更新する事で電気やガスの使用量を削減、2013年度と比べて2024年度の生産エネルギー効率は32%向上しました。


弊社の太陽光パネルからの電力は一部を除いて売電しており、2022年までは売電額が電力購入額とほぼ同等だったのですが、2023年度からは九州電力による出力制御と電気料金の値上がりにより15%程度の支払い超過となっています。(2013年プレスリリースご参照)
あくまで現状ベース単純試算での弊社内バランスとしてですが、太陽光パネルからの発電出力を全量自家消費に切り替えれば、日本政府の意欲目標である温室効果ガス2030年度50%削減(2013年度比)が2024年度時点で実現できています。

■その他
明和製作所は福岡県の「筑紫・糸島地区地域環境協議会」の構成機関として活動すると共に、弊社社長が福岡県私学協会からの依頼で「ものづくり人材育成事業」の一環として、福岡県の工業高校の生徒さんに向けて、「来るべき低環境負荷社会と私達の取組み」という表題で環境エネルギー問題について啓発する「出前授業」を10年以上継続して行ってきています。
現代社会の利便性を享受したまま、2050年までにカーボンニュートラルを実現するには、今ある技術だけでは不十分ですので、若き技術者による将来のイノベーションに期待したいと思います。
以上ささやかながら、弊社のカーボンニュートラルにむけた取組みをご紹介しました。
最後に繰り返しとなりますが、弊社は高効率モータ、コントローラや減速機を含む駆動ユニット、発電機・ハイブリッド機構などを顧客企業の製品機器に搭載いただく事で、最終製品ソリューションの社会での活用を通してCO2削減に貢献したいと考えています。
エンジンや油圧ユニットからの電動化のご要望があれば是非ご相談下さい。できる範囲では御座いますがご協力させていただきます。