株式会社 明和製作所

BLOG技術者ブログ

CAMについて2

2023.12.14

お久しぶりです技術H.Yです

今年も残すところひと月弱となりました。皆様はいかがお過ごしですか?

12月にしては暖かい日が続いておりますが、予報ではこの暖かさから一転して、急に真冬並みの寒さとなるそうですので、体調管理に気をつけてください。

さて私の前々回のブログ「設計製図(2次元3次元CAD)について」ではCAD(キャド)について、前回のブログ「CAMについて」では、CAM(キャム)の仕組みの概要について書かせて頂きました。

前回のブログ「CAMについて」ではCAMとはコンピュータを使用して製品の製造・加工を手伝う為のツールで、CADの設計データと使用する工・加工条件などを設定することで、工具の経路と加工方法であるツールパス(CLデータ)や製造機械で使用するNCデータを製作することができるソフトウェアの総称であると説明しました。

今回はそのCAMについての利点や種類など詳しく書いていきたいと思います。

また前回はグラカスト(「グラカスト」研究開発成果報告参照)への適用についても紹介しましたが、今回はそれを応用した金型製作についても触れたいと思います。

「CAMの利点」

CAMは様々は分野において利用されていますが、製造業やその他の分野での使用においてさまざまな利点があります。CAMがもたらす主な利点について説明していきます。

利点① 加工精度の向上

CAMは数値制御装置(NC)がついた機械を動かすことを目的としたソフトウェアです。このNC機械はコンピュータ制御によって精密な動作ができる機械の為、CAMの設定しだいで、非常に高い精度の加工を行うことが可能です。これにより様々な仕様を満たすことができ、製品品質の向上へと繋がります。

利点② 複雑な形状の加工

CAM使用以前のNC機械では加工経路を人の手でプログラムしていたので複雑な形状への対応が難しかったです。ですが、CAMは設計データを元にコンピュータ上で自動的に加工経路をプログラムする為、従来では難しかった複雑な形状の製品を製造することが可能になりました。

利点③ 生産性の向上

CAMは製作する部品の加工工程をコンピュータ上でシミュレートして、最適な工具の動作や加工手順などを自動的に生成できます。その為、CAMで製作された加工経路は無駄な加工や工具の移動などが無く、製造時間の短縮になっています。これにより、同じ時間内でもより多くの製品を製造することができます。

またCAMを使用することで、一度に複数の部品を製造したり、無人の状態でも生産を行うことができるようになる為、生産性の向上になります。

利点④ 労力の削減

CAMは加工条件や使用工具の選定など生産設計時の作業の自動的に行ってくれます。これにより、作業者は手動でのプログラミングや加工条件の計算などの作業をなくすことができるので労力の削減になります。また人の手による作業が減るのでその分、人的ミスによる損失を抑えることにもなります。

利点⑤ CADとの連携

CAMは、CAD(コンピュータ支援設計)などの設計ツールとの連携が可能です。連携することでCADで製作した設計データをCAMに直接取り込むことができます。これにより、設計から製品の生産までを素早く行うことが可能になります。また、設計の変更があった場合も、CAD上の変更をすぐにCAMに反映できる為、効率的な製造を行うことができます。

利点⑥ 持続可能な製造

CAMは加工工程のシミュレートを行うことができる為、生産に必要な材料の最小量を予め求めることができます、これにより生産で使用する材料の無駄を削減することができます。また上記で説明した様にCAMは生産性の向上も行うので生産の際の機械の稼働時間の短縮ができます。これにより無駄を減らした製造を行うことで環境にも配慮した持続可能な製造を行うことができます。

いくつかCAMの利点について紹介を行いましたが、CAMは生産性の向上、労力の削減など製品製造の過程において多大なメリットをもたらしていて、現代の製品開発を支える重要なツールなっています。

「CAMの種類」

CAMには、2D CAM、3D CAMなどいくつかの種類があります。ここではその中でも主なCAMの特徴や使いどころなどを説明していきます。

「2D CAM」

幅と奥行きがあるが厚みがほとんどない二次元的な製品の設計を行うために使用されるCAMです。プレートやシートなどの板物の切断や単純な形状の部品製造など、主にシンプルな製造過程に使われています。

「2.5D CAM」

「2D CAM」に高さの情報を加えたCAMになります。幅と奥行きだけでなく高さも考慮されているので、立体的な形状を作れるようになっています。ただし「3D CAM」と違って複雑な立体形状は作れないので、穴を開けたり、刻印行ったりなどの単純な立体形状を作り出す加工に使われます。

「3D CAM」

「3D CAM」は幅・高さ・奥行きのある、立体的な製品の設計を行うために使用されます。

「2.5D CAM」とは違い斜面、曲面などの複雑な形状などにも対応できるため、立体的な部品を必要とする製造業など様々な分野において使用されています。

「多軸CAM (4/5軸CAM)」

「3D CAM」の3軸(幅・高さ・奥行き)にさらに異なる軸(方向)を加えてより複雑な加工ができる様になったCAMです。使用されている軸数にもよりますが一般的に4軸、5軸を使用している物のことをいいます。「3D CAM」が加工できない場所の加工や複雑な作業ができるのが特徴です。多くの方向から部品を加工できるので複雑な曲面や形状をもつ、航空機のプロペラや自動車部品の製造などに使われています。

様々なCAMの種類の紹介を行いましたが、CAMにはそれぞれに合った適性がありますので、CAMを使用する際には何を作りたいのか、またどの程度の精密さが必要なのかなどの条件から適切なものを選ぶ必要があります。

「CAMの応用」

上記の利点から、CAMの応用範囲は広く、さまざまな産業で利用されています。

以下にいくつかの具体例を挙げます。

まずは生産性と品質の向上の利点から精密な加工を短時間で行うことができ大量生産を行う製造業でよく使用されています。

特に金属製品を高精度に加工する必要がある、航空機部品や自動車部品の分野で使用されています。

またCAMの「複雑な形状の製造」の観点から彫刻や立体造形などのアートの分野にも利用されています。

彫刻や立体造形の設計時にCAD等のデジタルツールを利用することで、彫刻機やレーザーカッターなどの機材をCAMで制御することができます、それにより美しい彫刻作品や立体造形物を製造が可能になります。このようにCAMを活用することで、デザインの自由度や精度が向上し、従来の方法では実現困難だった複雑な形状を持つ作品を制作することができるようになっています。

他にも、医療分野においてもCAMは重要な役割を果たしています。

義手や人工関節などの製造において製品の精度と高い品質が必要なことはもちろんなこと、患者様の体型や要求に合わせた最適な製品を提供することが重要になります。その為3Dスキャンデータなどを基に患者様一人一人に合せた形状を製造することのできるCAMが活用しています。

これにより、医療分野でもCAMはカスタマイズ性や製品の精度と品質の向上が実現されています

明和製作所でのCAMの活用

明和製作所の得意分野は大量生産ではありませんが、高精度な製品を小ロットでリピート生産していますので、モータ軸や歯車、アルミフレーム部品の製造などでCAMの利点を最大限に活用しています。

また弊社ではこれまで、アルミダイカストの金型の制作は基本的に外部の協力工場に制作依頼をしてきましたが、小ロットで金型製作費の償却が出来ない案件が増えてきているのが悩みでした。

そこで前述のグラカスト(「グラカスト」研究開発成果報告参照)では、加工性に優れ耐圧縮性・耐高熱性があるグラファイト材をアルミダイカスト金型のキャビティ部に適用することで、型製作の期間短縮と高精度・低コストで小中ロットに適したアルミ鋳造法を実現しました。

ただグラファイトは強度的な問題で製品形状やサイズに制限があるため、現在はその技術を応用した簡易金型の制作にも取り組んでいます。

SKD鋼などの金型専用鋼材ではなく一般的な炭素鋼を使う事で、マシニングで加工でき、限られたショット数の範囲で使える短納期・低コストのアルミダイカスト鋳造金型を提供する事が目的です。

まずはグラカストでもターゲットとしたモータ部品であるブラケットを対象として開始しています。

現在そのトライアルを進めて行く中で、改めてCAMの利点を実感しています。

量産製品の部品を加工する場合には、一個の加工時間を1秒でも減らすために、加工方法や加工順序についても頭をひねってきました。しかし金型は余程の大量生産でない限り、同じ型をたくさん製作し続けるわけではありません。ですので金型の加工時間を色々悩み考えて数分縮めても、その効果は悩み考えた時間で寧ろマイナスになってしまいます。CAMでの加工パスの作成においても本当はもっとこうした方が速く加工できるということはあるのですが、ある程度自動でやってくれるCAMに任せてしまうことで効率化が図れ、結果的に全体ではお客様に喜んで頂ける金型や製品のQCDが達成できると感じています。

いかがだったでしょうか?

今回はCAMについての解説(ものづくりに関わる技術者の方であれば、すでにご存じの内容ばかりだったとは思いますが)と弊社での取り組みを少しご紹介しました。

ご興味を持って頂けましたら幸いです。

ではまた!

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