モータと平行軸減速機の組み合わせ
どうもお久しぶりですU.N.です。最近空気が冷えてきましたが体調などはいかがでしょうか?この前まで暑い暑いと言っていたのがウソのような冷たい秋風が吹いてくるようになりました。
秋風という単語から私が思い浮かべるのは三国志の「秋風五丈原」でしょうか。
秋風吹く五丈原にて対峙する魏と蜀。押しても引いても動かない魏の司馬懿仲達の守りを崩す事ができず、病を押して指揮を執っていた蜀の諸葛亮孔明は自らの天命が尽きつつあることを悟り・・・という、ある意味三国志のクライマックスの場面と言え、その後に続く「死せる孔明生ける仲達を走らす」と合わせ哀愁が漂い、特に好きな場面です。
さて、今回はモータと減速機の組み合わせです。弊社ではモータ以外に歯車の製作やモータ減速機用ギヤボックスのアルミ鋳物加工とアルミダイカスト鋳造・加工を行っています。それらを組み合わせた減速機付モータ(ギヤドモータ)としても製作を行っています。
こちらは弊社で製作している平行軸タイプの減速機付モータのひとつになります。モータと減速機を組み合わせることで減速機部分の出力軸からモータ単体のトルクよりもギヤ比分増幅したトルクを出すことができるため、モータ単体では難しい重量物の巻き上げを行うことができるようになります。反面、速度伝達比の関係より回転数はギヤ比分低下するため回転速度は低下します。ただし回転数の低下は一概に悪いものではなく高すぎる回転数の調整においてもモータと減速機を組み合わせることは有用です。
減速機にはいくつか種類があり、
1.平行軸減速機:オーソドックスな減速機。本項で解説。
2.直交減速機:モータ軸に対して出力軸が90°の向きになっているもの。製品に対し直角に取り付けられるため平行軸に比べてスペースの確保をしやすい。
3.遊星減速機:遊星ギヤを用いた減速機。モータ軸と出力軸が同芯のため減速ユニットがコンパクト。
などがあります。
ここで平行軸減速機の構造を見てみましょう。
これが減速機のカバーを外した状態です(各部の名称は弊社内で使用している名称)。歯車箱やギヤに付いている黒い液状のものは歯車潤滑用のグリースで、歯車箱の取付面にある茶色の薄い紙のようなものは油分の流出を防ぐパッキンとなっています。
ではさらにギヤの部分を拡大してみましょう
この減速機はR軸から出力軸に至るまで2度の歯車同士のかみ合いを経ているため2段減速となります。今回のような2段減速の場合、各歯車は下図のような回転を行っていますのでR軸(1ギヤ)の回転方向と出力軸の回転方向は一致しています。
2段減速 R軸の回転方向が時計方向(CW)の場合
CW動作
2段減速 R軸の回転方向が反時計方向(CCW)の場合
CCW動作
また減速段数を変えた場合、平行軸減速機では以下のように回転方向が変化します。
減速機付きのモータの場合、出力軸回転数は1Gの回転数を減速比で割ったもの、出力軸トルクは1Gのトルクに減速比をかけたものになるので例としてカタログのPM-SS8 G02の定格仕様値では回転数が3000r/min、トルクは0.29N・m、出力は90Wとなっており、減速比20の減速機を取り付けた場合は
・回転数:3000÷20=150r/min
・トルク:0.29×20=5.8N・m
となります(※今回は歯車の伝達効率について考慮しません)。
回転数が下がった比と同じだけトルクが上昇しているため、回転数とトルクの関係式より出力は変わらず90Wとなります(実際は伝達効率があるため同じ出力の場合減速機ありとなしで回転数やトルクの値が多少変動します)。
また、各ギヤ同士はネジレ角やモジュール、歯車間の軸間距離といった様々な要素でペアとなるように設計されているため適正な組み合わせでないとギヤが組み立てられません。ですので、ある減速機Aにギヤの仕様が違うギヤの歯が切ってあるモータBを組み込んだり、減速機内のギヤを仕様が合っていないギヤに置き換えようとするとギヤ同士が噛み合わずに組み立てることができない、もしくは回転させることができません。
そのため減速機とモータを別々に用意する場合はそれぞれの歯車仕様を理解しておく必要があります。その点、弊社では1G(モータ)から最終ギヤまで一貫して設計・製作していますので上記のように噛み合わないといったことはなく、また適正な減速比を設定してお客様が求める仕様の減速機付きモータを製作することができます。
また、弊社で生産している平行軸減速機付きモータは電力向け配電機器用、ポンプ用、作業車駆動用、工具用などなど、多種多様な分野で使用されています。
今回は平行軸減速機のご説明でしたが、他月のブログではIPM用に開発している遊星減速機や直交減速機もご紹介していますのでそちらも併せてご覧ください。
・IPMモータ・ギアモータ直近の開発動向
・IPM用遊星減速機と直交減速機が出来ました~!!
また、ギヤについても何度かご紹介していますのでよければそちらもご覧になってください。
・機械要素部品である歯車について
・歯車話(機械要素部品である歯車について2)
・歯車の製造方法(機械要素部品である歯車について3)
簡単でしたが今回はここのあたりで。次回はどのような話題が飛び出すのでしょうか。
それでは。