株式会社 明和製作所

BLOG技術者ブログ

モータの絶縁について

2023.09.13

Yagiです。
9月に入っても、残暑の厳しさを感じるような毎日がつづいておりますが、皆様いかがおすごしでしょうか。
会社の健康診断で引っかかり、先日初めてMRI検査を受けてきました。
当日は、問診を受け、検査着に着替え、検査用の寝台に寝ると体を固定され、そのままトンネル型の装
置の中へ・・・爆音がする中20~30分で検査は終了しました。検査中、防音の為ヘッドホ-ンを付けて
おりましたが、それでもうるさくて少し不快に感じました。また、体の中の水分によって電子レンジと
同じ原理で、体がポカポカ温かくなりました。
検査結果は異常所見なしでしたが、一つ歳をとるごとに体の衰えを感じる今日この頃です。

さて、今回はモータの絶縁について記述いたします。


モータの絶縁が不十分ですと、内部でショート(短絡)を引き起こし、過電流を発生させ、モータの異
常発熱や損傷、さらには火災の原因になる可能性がありますし、内部の電流が外部に漏れ出した場合は
感電事故につながる可能性がありますので、モータの絶縁設計は、性能、寿命、信頼性、安全性に大き
な影響を与える、大変重要な技術要素です。

電気絶縁について
 電気を通さないモノ(絶縁体)で電気が流れる部分(導体)を覆うことにより、電路同士が近づいて
 も短絡しない状態を作る(他の導体との電気的接触を遮断する)ことをいいます。
 絶縁体:プラスチック、ゴム、セラミック、紙、ガラス、エポキシ樹脂、ポリウレタン など
 導 体:銅、アルミニウム、金、銀、鉄、など
 また、絶縁には、基礎絶縁・付加絶縁・二重絶縁・強化絶縁 等の種類があります。
 下図は、整流子モータの絶縁構造を表しています。

基礎絶縁
 感電に対する基礎的な保護をする絶縁です。
 巻線の絶縁(溝絶縁・端絶縁・軸絶縁)がこれに当たります。

付加絶縁
 基礎絶縁が破壊した場合に感電に対する保護をするため、基礎絶縁に追加して施した独立の絶縁です。
 樹脂フレーム・樹脂モールドがこれに当たります。

二重絶縁
 基礎絶縁と付加絶縁の両方を備えた絶縁で、高い安全性を保つことができます。

 *二重絶縁モータは、電動ドリル、電動鉄筋カッタ、電動コンクリートバイブレータ、
  電動インパクトレンチなどの電動工具で使われています。これらのツールは、ユーザーが直接
  手に持つため、安全性が特に重要視されます。
  その他、家庭用の水ポンプにも二重絶縁モータが使用されます。
  ポンプは水中で運用されることが多く、絶縁の保護が不可欠です。

強化絶縁
 二重絶縁と同等に感電に対する保護を行なうことができる単一の絶縁です。
 ブラシキャップ・ブラシホルダー及び整流子の樹脂部分がこれに当たります。

  ロータ・ステータは巻線後、【電気絶縁性向上】【振動・衝撃によるエナメル線被覆の破壊や
  コイルの変形を防止】【外部からの湿気・化学物質・埃などの影響からの保護】を目的として
  ワニス含侵処理を行っています。

 絶縁の方法としては、導電部を絶縁物で覆う方法の他に、絶縁距離を設けることで絶縁するという
 方法もあります。これは、空気も絶縁体の一つと考えることができるからです。

絶縁距離とは
 導電部同士が短絡を起こさないために確保しなくてはいけない最短距離のことを表しています。
 代表的な絶縁距離には、空間距離と沿面距離の2つがあります。

空間距離
 2つの導電性部分の空間を通る最短距離を表します。

沿面距離
 2つの導電性部分間の絶縁物の表面に沿った最短距離を表します。

小型交流電動機の空間距離及び沿面距離は、JISC4220で定められています。


耐熱クラスについて
 一般的に、電気絶縁材料は耐熱クラスで分類され、それぞれのクラスには材料の許容最高温度が
 定義されています。
 耐熱クラスは、絶縁材料の耐熱性能を表すための指標で、絶縁材料が高温環境でどれだけの温度
 を耐えることができるかを示しています。


 弊社ではモータにかかる負荷(トルク)、動作時間(連続・短時間・反復)、絶縁耐力、使用周囲温
 度(-10~40℃を基準としています)コスト等の要件をもとに適切な耐熱クラス(絶縁材料)を選択
 しています。また、配電機器用モータは、数kVのインパルス耐電圧を求められるため、通常の製品
 より絶縁を強化しています。以下にモータの主な絶縁評価事項を示します。

絶縁抵抗測定:
 漏電や感電を防ぐために、絶縁材料が漏電を防ぐ能力(電気の流れにくさ)を測定することです。
 絶縁抵抗値値が大きければ大きいほど漏電を防ぐ能力高いことを表します。

耐電圧試験:
 絶縁材料が使用電圧に対して十分な絶縁耐力があるかどうか(絶縁破壊をしないかどうか)を確認
 するための試験です。絶縁劣化や隠れた絶縁不良を検出するのに役立ちます。

温度上昇試験:
  定格条件にてモータを運転した際、各部の温度が許容範囲内に収まっているかを評価する試験です。

いかがでしたでしょうか?

冒頭に書きましたようにモータの絶縁設計は、性能、寿命、信頼性、安全性に大きな影響を与えます。
不十分な絶縁は、モータ内部でショート(短絡)を引き起こし、過電流を発生させ、モータの異常発熱
や損傷、ひどい場合には火災や感電事故の原因になる可能性があります。

電力向け配電機器用モータ」は大電圧・大電流がかかるため高い絶縁性が必要ですし、「電動工具
等手に触れる機器では特に慎重な設計が必要です。

明和製作所では、問題やリスクを最小限に抑えるために、十分な検討と評価を実施し、お客様に信頼
して頂ける製品を提供しています。

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