DCマグネットモータの特徴
お久しぶりですU.N.です。
9/10は中秋の名月ということで空を見上げてお月様を眺めていた方も多いのではないでしょうか。私もお月様を眺めながらお団子をと思い、日が落ちてから買いに出かけるもどこも売り切れ。皆さん考えることは一緒だなーと思い月明かりが照らす街をのんびりと歩きながら帰路につきました。
月といえばNASAの月面着陸計画であるアルテミス計画もロケットの打ち上げ直前まで来ていますね。現在これを執筆している段階では数度の打ち上げ延期により次回は9/27に打ち上げ予定となっていますが、月の女神がほほ笑むような結果になると良いですね。
さて、今月は弊社が生産している「DCマグネットモータ」と呼ばれるモータについて簡単にですが書いていきたいと思います。内容は以下のようになります。
1.DCマグネットモータとは
2.DCマグネットモータの特徴
3.どのような用途に使用されているか
前回私が書いたブログでは電力向け配電機器用モータについて書かせていただいています。配電機器用の設備に使われてるようなモータにも弊社のDCマグネットモータが使用されていますので併せてお読みいただけますと幸いです。
1.DCマグネットモータとは
弊社内でDCマグネットモータとは直流(Direct Current)電源で駆動する、固定子に永久磁石を、回転子にコイルを用いたモータです。
弊社の製品紹介、カタログなどで形名の頭にPM(永久磁石モータ(Permanent magnet Motor))、PG(減速機付永久磁石モータ(Permanent magnet Geared motor))と記載されているものがDCマグネットモータとなります。
マグネットモータの回転原理は下の図のようにフレミングの左手の法則によります。
こちらは中学生の頃に習った図ですね!では、実際のDCマグネットモータはどのような構造になっているのでしょうか?モータ実物を少し分解してみましょう(ここからの写真は本ブログ用に弊社モータを分解した様子になりますが、安易に分解するとモータの破損やケガなどに繋がる可能性がありますので絶対に分解は行わないでください。)
こちらの写真と図面は弊社のDCマグネットモータの中でPM-S10と呼ばれる機種です。
実際はもっと細かいパーツに分類されていきますが、大まかな構造としてはLブラケット(出力軸側のベアリング支え)、ヨーク(マグネットを貼り付けたフレーム)、回転子、Fブラケット(整流子側のベアリング支え)、カーボンブラシからなり、これらを組み合わせDC電源から電力供給することで回転子が回転します。
2.DCマグネットモータの特徴
DCマグネットモータの特徴としまして、「リード線を入れ替えるだけで回転軸を時計方向、反時計方向に回転させることができる」というものがあります。
この特徴を使うことにより、例えば
・前進後退が必要な車体などの駆動輪
・上げ下げが必要な昇降部分
といった用途において複雑な回路を組まずに使用することも可能です。もちろん無理に両方向回転で使用する必要はなく、片方向回転のみでも使用することができます。
DCマグネットモータの特性ですが、下図のモータ特性曲線を見てもらうと分かるように負荷が高くなると回転数は一次関数のように落ちていきます。
(こちらの特性曲線は電流基準となっています)
このモータ特性①では無負荷の回転数が3200r/min、10Aの際は約2500r/min、出力150W、トルク0.55N・mと読むことができます。
さらにDC電源の電圧を変化させることにより、モータの回転速度を簡単に変えることができます。その回転数は電圧に比例して回転数全体がY軸方向に平行に変化します。
例:DC100V、10A時に回転数が2500r/minのモータ(モータ特性①)は、DC110Vにすると同じ負荷においては2750r/min程度の回転数を得ることができます(電圧を1.1倍すると回転数も約1.1倍となります)。逆にDC100VのモータをDC90Vにすると同じ負荷においては2250r/min程度の回転数となります。
※電圧の許す限り回転数を上げ下げさせることも可能ですが定格外での使用はモータの破損につながる可能性があります。
また、以下のように減速ユニットを取り付けることで高トルクにすることも可能です。
この特性曲線は特性曲線①で示したモータを減速させたモータのもので、減速比1/10の減速ユニットを組付けたことで無負荷が320r/min、10Aの際は約250r/min、出力150W、トルク5.5N・mとなっています。
減速比を1/10としたことで回転数はもとの1/10まで下がっていますが、その代わりトルクはもとの10倍となっており、主に昇降用の装置や搬送機といった低速で動作し、かつ高い力が必要な場合に減速ユニット付きのモータが採用されます。
さてこの減速ユニットですが弊社では市販されている既存の減速ユニットをモータに組付けるのではなくお客様の仕様に合うように設計し、所内にて歯車の加工を行い専用のユニットとしてお作りしています。
また、モータ本体についても巻線設計を行っているため仕様にあわせたモータを作ることできますので、2点を組み合わせることで「既存の減速機だと少し回転数が足りない」や「もうちょっとトルクが欲しい」といった問題に対して本当に欲しいモータを提案、製造することができます。
ここでDCマグネットモータを使用する際の注意点ですが、そのひとつに「モータを完全に停止させる前に現在の回転方向と逆方向に回転させたり、極端に高い負荷(電圧をかけたままモータの回転を無理矢理止める、定格電圧よりも高電圧で急始動させる)がかかると内部のマグネットが減磁(磁力が弱まる現象)する」というものがあります。
また、弊社のDCマグネットモータに使用しているフェライト磁石にみられる傾向として、低温状態(-20℃などの雰囲気下)においてモータに高負荷がかかると減磁が起きる場合があります(低温減磁)。こちらはマグネットの特性も大いに関連してくるため、マグネットの材質を変更したりヒーター等で低温減磁が起きないような温度まで室温を上げることで対応できます。
この減磁という現象ですが可逆性のものと不可逆性のものがあり、上記のものは一時的に磁力が弱まった可逆的な状態ではなくほとんどが恒常的に磁力が弱まった不可逆的な状態となります。そのため、不可逆の減磁が起きてしまった場合は製造元で再着磁もしくはモータを新品に交換する必要があります。
3.どういった用途に使用されているか
弊社のDCマグネットモータですが
・搬送機や電動草刈り機のような車両タイプの駆動用
・ウインチやリフトといった昇降が必要なもの
・各種ポンプ用
・介護用リフトや電動座椅子
・ピッチングマシーン
・ディスククラッシャ
・発電所や変電所等に用いられる遮断器や断路器といった配電機器の動作用
などなど、用途を限らず様々な業界の設備や機器に用いられています。
また、弊社DCマグネットモータの製品ページでは様々な仕様のモータがありますがこちらに記載されているものはあくまで一例であり、モータや減速機の仕様、軸の形状やモータの取り付けピッチは用途に応じた専用設計(カスタム設計)を行っています。
「モータを探しているが汎用品では仕様に合わない」、「現在使用しているモータが入手困難になり困っている」、「他メーカに断られた」
そのようなお客様のご要望や悩みにできうる限り応え得るように明和製作所はモータの設計から生産まで一貫して行っています。お困り事がある場合はヒアリングシートに記載して頂きお問い合わせページよりご連絡ください。
簡単でしたが今回は弊社のDCマグネットモータの特徴について書かせていただきました。次回はどのような話題が飛び出すのでしょうか。
それでは。