株式会社 明和製作所

BLOG技術者ブログ

モータの選定について

2022.06.10

お久しぶりです技術部のnakaです。私が執筆するのは2020年10月以来です。

あの頃は世界情勢がまさかこのようになるとは想像もできませんでした。
ウクライナでは未だロシアの侵攻に終わりが見えず多数の民間人の生命と生活が理不尽な犠牲を強いられています。最新の戦闘では軍事用ドローンなどもアメリカ政府からウクライナに供給されているという報道がありました。

軍事用はさておき、日本でも空撮を初めとして様々な用途で使われているドローンですが、2022年6月から国内航空法が改正され、業務用、個人用、おもちゃ等の区別なく100g以上のものは機体毎に登録が義務化されるそうです。
以前に購入してすでに飛行しているドローンも含め、6月20日以後は登録せずに飛行した場合には1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されるとの事ですのでご注意下さい。


  

さて今回はモータの選定方法についてご紹介したいと思います。

弊社にモータのご要望をいただく際に、お客様から技術的な要求仕様を明確に提示される場合はどちらかと言うとまれで、断片的な情報を元に基準となるモータを選定することが多いです。

選定のパターンを整理してみると下記のようなフロー図になるかと思います。

  

モータ選定のパターン
弊社のモータ選定は主に下図のようなフローで選定パターンが決まります。

既存モータがある場合はそのモータ仕様で動作実績があることを示していますので、既存モータの仕様に近いモータを選定します。
全くの新規開発等で類似やシリーズ製品での実績もない場合は、モータも完全に新規品を使用されることになると思います。この場合はモータ仕様値が設計値や推定の場合が多いため、一度仮作モータ等で実使用での仕様を確認してから本格的に選定する場合が多いです。

  

◆モータ選定時の仕様について
モータ仕様には様々な項目があり、用途によっても重要な項目が異なりますが、一般的に最も重要な項目(*)は下記です。

(*各項目の意味合いについては2020.11.17の当ブログ「弊社モータの仕様項目について」をご参照ください。)

     

・電源
・出力
・トルク
・回転数
・定格時間
・寸法及び質量
・保護方式
・寿命時間

   

このうち電源と出力、トルク(代わりに回転数から算出でも可)が基本で、これらが決まらないことには全く選定が進みません。
電源は決めて頂ければいいので、残る出力とトルク、これら2つをいかに求めるかが重要となります。
下記に既存モータ置換えでユーザー様が測定した下記のような数値から仕様を推定する場合について考えてみます。

  

[ユーザー様測定値(例)]
・モータの種類:整流子モータ
・モータのサイズ:胴回りΦ60(mm)
・実際の装置でのモータ回転数の測定値:10000(r/min)
・実際の装置で仕事をさせた時の平均電流:2.1(A)
・実際の装置で仕事をさせた時の平均電力:180(W)(電流値から推定しても可)
・電源電圧:AC100(V)

  

◆出力、トルク、回転数の求め方
モータの出力、トルク、回転数は下記の式が成り立ちます。

  

P=T・ω ・・・①
 =T・N・2π/60
Pは出力(W)、Tはトルク(N・m)、ωは角速度(rad/s)、Nは回転数(r/min)

  
この式から出力PはトルクTと回転数Nから、もし出力Pが分かっていればトルクTは回転数Nから計算して求めることができます。

  

しかしながら、実際問題としてユーザー様で装置完成品やモータ単独のトルクを測定することは難しい場合が多く、回転数とモータ電流値くらいしか測定できない場合もあります。
その場合は弊社に既存モータを貸与頂くなどして試験装置で測定した数値を用いるのが確実ですが、どうしても難しい場合には、精度は落ちてしまいますが、下記のような方法もあります。

  

  

◆入力電力とモータ効率からモータ出力とトルクを推定する
モータの効率(%)は下式で表されます。

  
η=P/Pin ・・・②
ηは効率、Pはモータ出力(W)、Pinはモータに入力される電力(W)
効率η(%)をモータ種類とサイズで凡そ下表のように仮定します。

  

  

例では
整流子モータ、φ60なのでη=0.55(効率55%)と仮定して
ユーザー様測定値よりPin=180(W)
推定出力Pは②を変形して
P=η・Pin
=0.55・180
=99(W)
と推定できます。

  

これよりトルクTは①を変形して
T=P・60/(N・2π)
ユーザー様測定値よりN=10000(r/min)
よって
T=99・60/(10000・2π)
≒0.095(Nm)
とトルクが計算できます。

  

繰り返しになりますが、この方法は当たりをつけるための方法で精度は高くありません。ここから推定した数値でモータを選定し、仮作モータ等で装置に組み込んで試験して頂き、必要に応じて仕様を修正するというのが実際の流れとなります。

  

また、ブラシレスモータやコントローラを使用しているモータの場合、ユーザー様で測定した数値にコントローラの効率や制御が含まれてしまい、推定がうまく行きませんので、こういった場合も既存モータを貸与試験させて頂く、又は仮作モータで一度評価頂くなどの方法が確実となります。

  

◆最後に

  

以上モータ選定の仕方について、例を交えてご説明しました。

聞きなれない用語や数式で戸惑われたかもしれませんが心配ご無用です。

弊社では様々な用途に対応した選定が可能です。「新しい機械を開発したいけどモータをどう選べば良いか分からない」や「今使っているモータが生産中止だけど、代替の選び方が分からない」など先ずはご相談下さい、最適な選定方法をご提案致します。

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