モータ解析について紹介
こんにちは技術部のYです。今回は私が主に担当しているモータ解析についてご紹介します。
近年、世界的な脱炭素社会(カーボンニュートラル)流れから、日本では「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」が目標として掲げられています。このため当社の顧客企業でも農機具や工事車両でエンジンから電動化への取り組みが進められ、電動工具でもコードレス(電池駆動)タイプへの移行が進み、小型高効率でメンテナンスフリーなモータが求められるようになってきています。
ホームページ、過去のブログを見ていただければわかるように、弊社ではもともと三菱電機から引き継いだ電動工具向けの整流子モータ製造からスタートし、1989年にDCマグネットモータの自社開発を行い、その後2005年からSRモータ、2015年頃からIPMモータの開発を行ってきています。
経験の少ない新分野のモータの開発では、様々な問題を解決する必要があり、通常のモータを応用した設計より長い月日を要しました。特にSRモータでは、永久磁石を使用せず固定子コアの電磁石からの引き付けのみで回転しますので、ロータの永久磁石の反発も利用するブラシレスモータに比べて、コアの歪みによる騒音が発生しやすく、効率を上げるのも困難です。これらの問題を改善するために、実際にいちいちモータ製作して特性試験後評価するのを何度も繰り返すのは時間とコストがかかり非効率です。
そこで役立つのがモータ解析です。
当社モータ解析では静磁場解析・過渡解析を行っています。
・静磁場解析
モータモデル作成後モータの種類で異なりますが、コイルに流す電流や選定した磁石・コア材料で静トルク(起動トルク)、磁束線、磁束密度、磁気ベクトル、インダクタンスなどが求まります。
・過渡解析(連成解析)
モータモデルの他に回路設計、励磁方法の設定を行い、モータモデルに回転数を与えることでモータ特性(トルク、電流、モータ出力、効率)や電流・電圧波形などが求まります。
例として解析によるSRモータの高効率改善についてお話します。
SRモータ高効率設計では過渡解析が有効でコア形状・巻線・励磁タイミングなど様々なパラメータの変更を行い、その都度モータ特性を評価することで最適設計が可能です。
・SRモータ解析結果例
モータ解析設計の後は、当然実際にモータを製作して実測値と比較する必要があります。当初モータ解析を始めた頃は解析値と実測値の結果が異なり苦労しましたが、経験を経て解析値と実測値の結果が近似するようになりました。
次にIPMモータの解析について一部紹介します。
回転子コアのスロットに磁石が入る構造となっており一般的に希土類磁石を使用します。磁力が強いためモータ磁気回路に大きく影響してモータ特性に関わってきます。なので、下図に示すように磁石周囲の①~⑤寸法の検討が大事になります。
例として磁石寸法を固定して③寸法を変更した条件のモータ特性表を載せます。
③寸法が長いと磁石から回転子コア表面まで長くなり磁力が弱まるのでコギングトルクが小さくなり低トルク域では回転数が速いですが、高トルク域だと磁力が弱いので回転数・効率が悪くなります。逆に③寸法が短いと磁力が強くなるのでコギングトルクが強くなり回転数が遅くなりますが、高負荷域まで安定した回転数・効率となります。
その他の寸法も上記のように検討することでお客様の仕様を満たすモータができます。
当社ではモータ設計、電気回路設計、制御プログラムもすべて社内一貫で開発しています。モータのことでお困りごとがございましたら、お気軽にご相談ください。