マグネットレスのモータ!とは?
今回このコーナーを担当します藤井です。私実は今、久しぶりに出張に出ていまして、大阪で仕事を終え先ほど列車に乗り込んだところです。今列車は日本海の鉛色の冬空に向って走っていて、大きな琵琶湖がまるで雲った空の一部の様に右側に横たわっています。左手には山が霧状の雲に薄っすらとふもとまで覆われて、なかなか九州では見れない光景です。つい今しがたまで、大阪のお客様と「部品が入らんで困っとります〜!」と、にぎやかに話してたのがウソみたいな静寂に包まれた冬の夕暮れの中を列車は進んでいます。
さて、気をとり直して今回はEVモータについて面白い記事をみつけたので、田舎の工具用モータメーカーの戯言と共に紹介してみたいと思います。
もうご存知の方も多いかもしれませんが、日産のアリアにマグネットレスのモータが採用されました。テスラみたいにインダクションモータを使ってるわけではなく一般的なブラシレスモータの回転子に、マグネットの代わりに8極式巻線界磁を使っています。何とスリップリングにより回転子側のコイルにも電流を流し磁力を調整出来る様にしたものです。これにより高速回転低トルク時の鉄損が減少し、この域でのモータ効率が良くなるのが特徴の様です。
これは昔からある巻線界磁形同期電動機で、構造上3相かご形誘導電動機にコストで及ばず、最近ではあまり作られていないのではないでしょうか??ただ大型モータで長時間運転する場合はコストメリットがあるとか・・昔本で読んだような気がします。多分大きさとコストを犠牲に、自動車としての使用頻度の多い低トルク域での省エネ効果、更にレアアースに左右されないコストの(よっぽど高額にはなりそうですが)安定性を狙った様です。ブラシの摩耗による耐久性等も実用面で問題にならないと判断されたのだと思われます。車の事を知らないと時代に逆行したような考えですから、ここに至るには色々あったのでは?と想像してしまいます。
現在2010年のレアアースの問題からレアアースを減らす、別の物へ変える、使わないと言う研究が盛んに行われてきた一つの成果なのでしょう。モータの存在は知っていましたがそれがEVへの実用化となると正直想像できませんでした。ただ、さすがに高級車にしか採用出来ないのでは?とどうしても思ってしまいます。
また、SRモータを少しかじった私としてはどうせなら、巻線界磁に電流を流さずリラクタンストルクまで利用できるモードがあれば更に面白いのでは?と考えるのですが、ただ一方で構造の問題もありますし、このモータではリラクタンストルクを使うメリットがもはやないのかも?マグネットレスにするためにブラシレスをわざわざブラシ付きにしたと言う事は究極のブラシレス、マグネットレスのSRモータの実用化はまだまだ難しかったのかな?とまあ・・色々考えさせられる発表です。
この先アリアの売れ行きと、このモータがどこまで採用されるのか?については、すごく興味深く今後を見守りたいと思います。
ビールを飲みながら列車に揺られポチポチとパソコンを打ってて、ふと気づくと外は真っ暗。これ以上続けると変なことを書きそうなので・・今回はこの辺で終わりにします。
次回1月も私が担当となりましたので、また戯言にお付き合いして頂ければ嬉しいです。
おまけ・・会社に戻り、私のイメージで各モータの比較図を描いてみました。(ご参考まで)
(注記:文中「マグネット」と記載しておりますが、正確には「永久磁石」の事を指しております。また、モータの名称を統一しておりません。私の中で一番多く使われていると思われる名称を、更に文意にあっていると思われるものを勝手に使っております。・・ご了承下さい)