電力向け配電機器用モータについて
立春とは名ばかりの厳しい寒さが続きますが、お元気でお過ごしでしょうか?今月ブログを担当させていただきますU.N.です。
立春といえば今年は立春が2月3日であったため、節分も2月2日になるという珍しい年になりましたね!
節分が2月2日になるのは124年ぶり、2月3日以外になるのは1984年2月4日以来37年ぶりだそうです。節分は2月3日だと思い込んでいたため、目からうろこな情報でした。
さて今月は明和内で製作しているモータの中でも特に高い品質が求められる「電力向け配電機器用モータ」 について取り上げていきます。
まずは下の図をご覧ください。
上の図は送配電の概略図になります。明和製作所が製作したモータはこの図の変電所や発電所用に使用されている配電機器用の動力として広く用いられています。
配電機器には下記のようなものがあります。
・遮断器:電流の遮断を行い回路の保護を行う機器です。高い消弧能力(アーク放電を消す能力)があるため大電流も遮断することができ、種類も油圧式、バネ操作式、エア操作式など多種にわたります。明和製作所のモータはばね操作式と呼ばれるものに採用されており、ばねの力を蓄える際の動力として使用されています。このばね操作式はほかの方式に比べメンテナンス性が良く、油圧ユニットなどの補器が不要といったメリットがあります。明和のモータは国内最大容量550kVのばね操作ガス絶縁遮断器にも採用されています。
・断路器:主に点検や保守作業の際に安全のため回路を切り離す機器です。遮断器と同じく回路の開閉を行いますが消弧能力がないため電流を遮断できず、通電中に動作すると発生したアークにより大事故につながります。したがって使用する際は遮断器で電流を遮断してから使用します。
上記のように大電圧・大電流がかかることから「高い絶縁性」が必要となり、かつ耐用年数が30年等と長期間に及ぶため「長い年月にわたって使用しても問題なく稼働する高耐久性」が要求されます。また、「年に数回かつ数秒しか動かない物もあり、その際に動作する」、「緊急時に確実に動作する」 といった、いかなる状況でもモータが動作するという信頼性と確実性が必須となります。
遮断器・断路器に使用されるモータの電源としてはDC電源が多いですがAC電源での操作も増えています。整流子モータ(ユニバーサルモータ)はDC/ACで使用できるためどちらの電源でも対応が可能です。また、マグネットモータはDC電源のみでの動作になりますが、整流子モータと比較してリード線を入れ替えるだけで正逆回転ができ、ブレーキ回路が簡単なためこちらも多く採用されています。
遮断器・断路器共に短時間しか動作しませんが始動時や動作時に大きなトルクを必要とするため、下の写真のような減速機付きのモータとしてギア部やモータ部の専用設計を行っています。
減速機に使われている歯車については先月のブログにも掲載されているため併せてお読みください。
減速機付き整流子モータ例:DG-S8 減速機付きマグネットモータ例:PG-SS8
明和製作所では上記に挙げたモータと減速機部の設計はもとより、所内でギヤやシャフトの製作・加工、フレームやギヤボックスの生産・加工、回転子や固定子への巻線、モータの塗装や組立等を行っています。
つまり設計から製造・組立、開発時の試作品での性能評価から量産での出荷試験にいたるまで、モータに関する様々な設計や部品の製造、評価試験や検査を所内で一貫して行えることが明和の強みであり、高い品質を維持する秘訣です。
では、今回は試作時におけるモータ性能評価の際はどのような試験を行っているか見ていきましょう。
1.負荷特性試験
負荷がかかった状態でのモータの性能を確認する試験です。試験装置にモータを取り付けて出力軸を回転させ、トルク、回転数、負荷電流、出力を求めます。定格域だけでなく軽負荷時や過負荷時についても測定を行います。
負荷特性試験機 特性図
2.温度上昇試験
指定された条件でモータを運転させ、各部の温度上昇値が該当する絶縁種に定められた値以下であるかの確認を行います。
温度上昇試験
3.拘束試験
モータの出力軸をパウダーブレーキもしくは治具で固定した状態で規定電圧を印加し、モータやギヤボックス、ギヤ、出力軸といった部品が破損しないかの確認を行います。
拘束試験
4.耐電圧試験
モータに対して指定された電圧を規定時間印加した際に絶縁破壊が起きないことを確認する試験です。試作時だけでなく量産時の出荷試験の際にも行っています。
試験機 耐電圧試験
5.耐久試験(寿命確認試験)
モータを指定された条件で運転させ続け、モータやギヤが破損しないか、炭素ブラシ、整流子がどれほど摩耗したのかを確認する試験です。
そのほかにも条件によって下記のような試験を実施いたします。
・低温減磁試験:マグネットモータを低温の雰囲気内に置いたのちに拘束試験を行ってマグネットを減磁(マグネットの磁力が落ちること)させ、モータの性能がどれだけ変化するかを確認する試験です。気温が低温(0℃以下)になる地域での使用を想定される際に行います。
・衝撃試験:モータをある高さから落下させ異常が無いかを確認する試験です。
・加振試験:モータのXYZ方向に振動を加えてモータに異常が無いかを確認する試験です。
・雷インパルス試験:モータに数千Vの電圧を印加し、モータに異常が無いかを確認する試験です。
※加振試験、雷インパルス試験は外部施設の設備を使用して試験を行っています。
試作時に上記のような試験を実施しモータの性能を確認しています。これらにより、要求されるスペックや品質を満足したモータの開発を行い、高品質モータの提供を可能にしています。
さて、今月は電力向け配電機器用モータと試作時の取り組みについて書いてみました。来月はどんな話題が飛び出すのでしょうか?
それではまた。