電気モータの整流子とブラシの関係
みなさんお久しぶりです。U.N.です。天高く馬肥ゆる秋とありますが、暑かったと思えば突如肌寒く感じるほどの気候の変化となり快適とは無縁の秋となっているように感じます。
さて連続テレビ小説「おむすび」が放送開始となりましたね。弊社がある糸島市も舞台の一つとなっており、テレビに映し出される景色が「ここ、知っているな」「あそこはあの場所かも」となるなど、ロケ地ならではの楽しみ方も醍醐味の一つとなっています。
(写真撮影 U.N.)
今回は整流子モータ(ユニバーサルモータ)やDCマグネットモータの回転に不可欠な部品、整流子とカーボンブラシ(以下、ブラシ)についてご説明したいと思います。
回転の原理につきましては 「DCマグネットモータとは」、巻線につきましては「モータの巻線方法と工程について」 のブログをご参考下さい。
早速ですがそれぞれの部品について見ていきましょう。
1.整流子とブラシの構造
整流子:整流子モータ(ユニバーサルモータ)やDCマグネットモータの回転子に圧入されている部品。セグメントと呼ばれる銅製の部品が絶縁材に区切られたもの。ブラシと接触しており、電源から電力の供給が行われます。
カーボンブラシ:カーボン、金具、スプリング、ピグテール等で構成された部品。ブラシ部には用途や状況により銅や樹脂等が混ぜ込まれます。様々な形状や方式があり、モータの種類や用途に応じた物を選定し使用します。
両部品は整流子の外径とブラシのR部分が合うように作られており、ブラシはブラシホルダーやホルダー金具といった部品で固定されてモータ内部に収納されています。
2.摩耗について
整流子モータの回転に必須の部品であるブラシと整流子ですが、この2部品はモータの使用を続けていくとそれぞれ摩耗していきます
ブラシは摩耗により徐々に短くなっていきますが、取り付けられたスプリングがブラシを押し出していくためスプリングが伸びきるまでは整流子と接触し続けます。交換可能なタイプのブラシでしたらブラシの寿命がきた段階で新しいブラシに交換することで引き続き使用できるようになります。(下記の整流子摩耗の件もある為、ブラシを交換しても復旧しない場合もあります。)
また、削れた際に出てきた炭素の粉についてはそのままにしているとフレームやブラケット内に堆積し、リード線やブラシホルダーの金具部といった電源から供給を受けている部分とフレーム等が導通してしまい絶縁不良となってしまうことがあります。風穴等があればエアブローを行いブラシの粉を吹き飛ばすことで絶縁不良を防ぐことができますので定期的のブラシの粉を取り除くことをオススメします。
※ブラシはモータの特性に合わせて最適な材質・バネ圧などが設定されているため、エンドユーザーが安易にサイズだけで‟互換品”と交換してしまうとモータ特性の悪化、短寿命化、モータそのものの故障、最悪火災となってしまうこともあります。
そのため機器メーカー様には必ず弊社供給の専用ブラシをエンドユーザーに提供していただくようにお願いしています。
また、整流子に関してもブラシと接触しながら回転運動を行っている関係上セグメントが徐々に摩耗していき接触している部分の径が小さくなっていきます。
こちらは整流子の交換ができない為、回転子ごと交換を行う必要があります。
3.ブラシの寿命
気になるブラシの寿命に達するまでの運転時間ですが、
・工具などに使用される整流子モータ(ユニバーサルモータ)やパワーユニットはモータ回転子の回転数が10,000~20,000r/minということも珍しくなく、出力や環境にも左右されますが数十時間~200時間程度となります。
・マグネットモータの場合は回転数が2000~3000r/minと、整流子モータに比べると低めなこともあり1000~2000時間程度の寿命となります。
ただし、ブラシの寿命はモータの仕様やブラシの材質やバネ圧、モータの使用環境や使用方法によって大幅に変化します。
4.整流火花
モータ回転中の整流子とブラシの接触部を見てみると火花が散っていることがあります。これは整流火花と呼ばれるもので、整流子とブラシの接触部分で電流が流れる際に発生するスパークです。
こちらの整流火花は接触している以上起きうるものですが、モータに異常がある際の指標にもなります。通常であれば1~4号の火花が正常であることが多いですが、5~8号のように大きな火花が発生したりするのであれば、過負荷、ブラシの接触不良、整流子の摩耗もしくは整流子面に傷がついている、コイルに何らかの異常が発生しているなどの可能性があります。そのまま使用するとブラシ・整流子の異常摩耗、モータ性能の低下、さらには火災につながる恐れもあるので直ちに使用を停止してください。
5.ブラシレスモータ
整流子を使ったモータには必須のブラシですが、ブラシレスモータはその名の通りブラシを必要とせず、ブラシが必要ないということは整流子も必要ないので上記に挙げた整流子とブラシの摩耗には影響されないメンテナンスフリーのモータとなっています。
しかしながらモータとは別に駆動用コントローラが必要であるため、モータとして単体で駆動できる整流子モータと比べると価格的には高価になりますし、特性の違いや、使用環境の制限などの注意点などがあります。
ブラシレスモータの一種である弊社IPMモータについてはこちらをご覧ください。
今回は整流子とカーボンブラシのお話でした。整流子モータ(ユニバーサルモータ)やDCマグネットモータを採用される際には、用途によって最適なモータタイプやブラシ仕様のご提案を差し上げますのでご相談ください。